【未来の金融】「自然資本会計」は、国の「豊かさ」の、物差しを、どう、変えるか?

はじめに:GDPでは、測れない「本当の、豊かさ」とは?

私たちは、長年、国の、経済的な「豊かさ」を、測る、主要な指標として、「GDP(国内総生産)」を、使ってきました。

GDPは、一国で、一年間に、生み出された、モノや、サービスの、付加価値の、総額です。

しかし、この、GDPという、物差しには、大きな「欠陥」があることが、以前から、指摘されてきました。

例えば、森林を、大規模に、伐採すれば、木材の、販売額が、増えるため、GDPは、成長します。

しかし、その、代償として、私たちは、CO2吸収源や、生物多様性、水源涵養機能といった、かけがえのない「自然資本」を、失っています。

この、自然資本の、損失(資産の、目減り)は、GDPの、計算には、全く、反映されません。

この、致命的な、欠陥を、是正し、国の「本当の、豊かさ」を、より、正確に、評価するための、新しい、経済指標として、国連などが、導入を、推進しているのが、「自然資本会計(Natural Capital Accounting)」です。

自然資本会計とは?

自然資本会計とは、一言でいうと、国の、経済的な、資産(工場、機械など)と、同じように、その国が、保有する「自然資本(森林、湿地、水資源など)」の、ストック量と、その、変化を、体系的に、測定・記録し、国の、バランスシート(貸借対照表)や、フロー計算書に、統合しよう、という、試みです。

その、目的

  • 自然の、価値の「見える化」:これまで「タダ(無料)」と、見なされ、経済的な、意思決定の、蚊帳の、外に、置かれてきた、自然資本の、重要性を、政策決定者や、国民に、分かりやすく「見える化」します。
  • より、賢明な、政策決定:例えば、ある、湿地を、埋め立てて、工業団地を、建設する、という、計画が、あったとします。

    従来の、費用便益分析では、工業団地が、生み出す、経済的な、便益だけが、考慮されがちでした。

    しかし、自然資本会計の、枠組みでは、その、開発によって、失われる、湿地の「価値」(治水機能、水質浄化機能、生物多様性など)も、金銭換算して、比較衡量するため、より、長期的で、賢明な、意思決定が、可能になります。

  • GDPの、補完:GDPに、自然資本の、減耗分を、加味した、新しい、指標(例:「グリーンGDP」)を、算出することで、国の、経済成長の「質」を、より、正確に、評価することができます。

カーボンクレジット市場との、関係

自然資本会計の、考え方は、カーボンクレジット市場とも、深く、関連しています。

カーボンクレジット、特に、NCS(自然を基盤とした解決策)の、プロジェクトは、まさに、この「自然資本」の、価値を、経済的な、価値へと、転換する、具体的な、メカニズムだからです。

国が、自国の、自然資本会計を、整備し、「我が国の、森林には、これだけの、炭素が、蓄積されており、その価値は、〇〇ドルに、相当する」といった、情報を、正確に、把握すること。

それは、その国が、パリ協定第6条に、基づく、国際的な、クレジット取引に、参加したり、あるいは、国内の、排出量取引制度を、設計したり、する上での、信頼性の高い、科学的な「土台」となります。

まとめ:国の「バランスシート」を、書き換える

自然資本会計の、導入は、私たちが、国の「豊かさ」や「富」を、どう、捉えるか、その、根本的な、パラダイムシフトを、迫るものです。

もはや、目先の、GDPの、成長率だけに、一喜一憂する、時代は、終わりました。

その、成長が、未来の世代から「借りている」貴重な、自然資本という「資産」を、食い潰した上で、成り立っている、見せかけの、成長ではないのか。

その、成長の「質」こそが、問われる時代です。

国の、会計基準が、変われば、政府の、政策が、変わり、企業の、行動が、変わり、そして、社会全体の、価値観が、変わっていきます。

この、静かで、しかし、巨大な「会計革命」の、動向を、注視しておくこと。

それは、これからの、国家の、競争力と、持続可能性の、行方を、占う上で、非常に、重要な、視点と、なるでしょう。…