はじめに:企業の「責任」、その、もう一つの、側面
私たちは、これまで、企業が、果たすべき「社会的責任」として、環境保護(E)や、人権配慮(S)、そして、健全な、統治体制(G)の、重要性について、学んできました。
しかし、企業の、責任を、考える上で、もう一つ、決して、見過ごすことのできない、極めて、重要な、側面が、あります。
それが、「納税」です。
企業が、その、事業活動を、行う国や、地域に対して、法律に従い、公正に、税金を、納めること。
それは、社会インフラや、公共サービスを、支える、市民としての、最も、基本的な、義務です。
しかし、一部の、グローバル企業は、国の、税法の「抜け穴」や、タックスヘイブン(租税回避地)を、巧みに、利用して、その、納税義務を、合法的に、最小化しようとする、「タックス・アボイダンス(租税回避)」を、行っている、と、厳しく、批判されています。
今回は、この、企業の、税金に対する、姿勢と、気候変動対策との、意外な、しかし、深刻な、関係性について、考えます。
タックス・アボイダンスは、なぜ、問題なのか?
タックス・アボイダンスは、法律を、破る「脱税(Tax Evasion)」とは、異なります。
あくまで、合法的な、節税スキームです。
しかし、その、行為は、企業の、社会的責任の、観点から、多くの、深刻な、問題を、はらんでいます。
- 公共サービスの、劣化:企業が、本来、納めるべき、税金を、納めなければ、国の、税収が、減少し、その、しわ寄せは、医療、教育、インフラ整備といった、私たちが、必要とする、公共サービスの、質の低下へと、繋がります。
- 不公平感と、社会の、分断:真面目に、税金を、納めている、国内の中小企業や、個人から見れば、巨大な利益を、上げながら、税金を、ほとんど、払わない、グローバル企業の、存在は、著しい「不公平感」を、生み出します。
これは、社会の、分断と、政府への、不信感を、助長します。
- 途上国からの、富の収奪:特に、問題が、深刻なのは、開発途上国です。
グローバル企業が、途上国で、得た利益を、タックスヘイブンへと、移転させることで、本来、その国の、発展のために、使われるべきだった、貴重な、税収が、奪われてしまいます。
タックス・アボイダンスと、気候変動の「不都合な、関係」
そして、この、税の問題は、気候変動対策とも、深く、結びついています。
気候変動対策には、巨額の「公的資金」が、必要です。
再生可能エネルギーの、導入支援、防災インフラの、整備、そして、気候変動の、影響を、受ける、脆弱な、コミュニティへの、支援…。
これらの、資金の、原資となるのが、まさに「税金」です。
企業が、公正な、税負担を、回避することは、結果として、社会全体で、気候変動に、立ち向かうための、重要な「原資」を、奪っている、ということに、他なりません。
サステナビリティ報告書で、どれだけ、美しい、環境保護活動を、謳っていても、その、裏で、アグレッシブな、租税回避を、行っているのであれば、その、企業の、主張は、全く、説得力を、持ちません。
それは、まさに「言行不一致」であり、一種の、偽善と、言えるでしょう。
投資家として、どう、向き合うか?
ESG投資の、文脈においても、この「税の、透明性」は、企業の、ガバナンス(G)を、評価する上で、ますます、重要な、要素と、なっています。
投資家は、企業に対して、単に、税金を、多く、払うことを、求めるのでは、ありません。
求めているのは、自社が、どの国で、どれだけの利益を、上げ、どれだけの税金を、納めているのか、その「国別報告書」を、透明性高く、開示し、その、納税方針について、ステークホルダーに、誠実に、説明する、責任を、果たすこと…