【海運・航空業界】国際輸送の脱炭素化とカーボンクレジットの役割

はじめに:国境を越える「排出源」を、どう捕まえるか

私たちの、グローバルな経済活動や、豊かな生活を支える、国際海運(コンテナ船など)と、国際航空(旅客機、貨物機)。

しかし、この二つのセクターは、合わせて、世界のCO2排出量の、約5%を占める、巨大な排出源でありながら、その対策が、非常に難しい、という、悩ましい課題を抱えています。

なぜなら、その活動が、特定の「国」に、帰属しない、国境を越えたものであるため、パリ協定のような、国別の削減目標の「枠外」に、置かれてきたからです。

今回は、この「捕まえどころのない」排出源の、脱炭素化に向けた、国際的な取り組みと、その中で、カーボンクレジットが、どのような、重要な役割を果たそうとしているのかを、解説します。

なぜ、海運・航空の脱炭素化は、難しいのか?

  • 技術的なハードル:船や、飛行機といった、巨大な輸送機器を、動かすためには、膨大なエネルギーが必要です。

    乗用車のように、簡単に、バッテリーEV(電気自動車)に、置き換えることはできません。

    水素や、アンモニア、持続可能な航空燃料(SAF)といった、次世代燃料の研究開発は、進められていますが、その実用化と、普及には、まだ、多くの時間と、コストがかかります。

  • 国際的な合意形成の難しさ:どの国の船籍か、どの国の航空会社か、どこで燃料を補給したか、など、その排出責任の所在が、複雑です。

    世界中の国々が、公平な形で、規制や、コストを、分担するための、国際的なルール作りには、多大な困難が伴います。

国際的な取り組みと、カーボンクレジットの役割

こうした困難な状況を、打開するため、国連の専門機関である、IMO(国際海事機関)と、ICAO(国際民間航空機関)が、それぞれ、業界全体の、CO2削減目標を掲げ、その達成のための、具体的な制度を、導入し始めています。

そして、その両方の制度において、カーボンクレジットによる「オフセット」が、当面の、重要な削減手段として、位置付けられているのです。

航空業界:CORSIA(コルシア)

ICAOが主導する、国際航空のための、カーボン・オフセットと、削減の仕組み(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)です。

  • 仕組み:参加国の航空会社は、基準年(2019年)からの、CO2排出増加分を、オフセットすることが、義務付けられます。
  • クレジットの役割:そのオフセットのために、利用が認められた、適格なカーボンクレジット(Eligible