はじめに:植物の、偉大な「発明」を、人間は、超えられるか
地球上の、全ての、生命を、支える、最も、重要な、化学反応。
それが、植物が、行う「光合成」です。
太陽の、光エネルギーを、使って、空気中の「二酸化炭素(CO2)」と「水(H2O)」から、糖などの、有機物(エネルギー)と、酸素(O2)を、作り出す。
この、自然界の、驚くべき、仕組みを、人間が、人工的に、再現し、あわよくば、その、効率を、超えよう、という、壮大な、科学的な、挑戦。
それが、「人工光合成」の研究です。
もし、この、夢の技術が、実現すれば、厄介者の、CO2は、一転して、価値ある「資源」へと、変わり、エネルギー問題と、気候変動問題を、同時に、解決する、切り札と、なるかもしれません。
人工光合成の、仕組み
人工光合成の、最終的な、目標は、太陽光エネルギーを、利用して、水と、CO2から、社会に、有用な、化合物を、直接、作り出すことです。
その、アプローチは、様々ですが、多くは、以下の、二つの、プロセスを、組み合わせることを、目指しています。
- 水を、分解し「水素」を、作る:
まず、特殊な「光触媒」と呼ばれる、物質に、太陽光を、当てます。
すると、光触媒は、その、光エネルギーを、使って、水を、酸素(O2)と、水素(H2)に、分解します。
(これは、まさに、植物の、光合成の、前半部分(明反応)を、模倣したものです。
)
- CO2と、水素から「有機物」を、合成する:
次に、この、生成された「水素」と、工場などから、回収した「CO2」を、別の、触媒を、使って、化学反応させ、様々な、有用な、有機物を、合成します。
・プラスチックの、原料:オレフィン(エチレン、プロピレン)など。
・燃料:メタンや、メタノールなど。
この、二つの、ステップを、一つの、システムで、シームレスに、行う、高効率な「人工葉(Artificial Leaf)」のような、デバイスの、開発が、世界中で、競われています。
人工光合成が、もたらす、未来
この技術が、もし、低コストで、大規模に、実用化されれば、私たちの、社会は、一変します。
- CO2の「資源化」:これまで、コストを、かけて、地中に、埋める(CCS)しかなかった、CO2が、様々な、化学製品を、生み出す、価値ある「資源」となります。
「炭素循環社会(カーボンリサイクル)」が、実現します。
- エネルギーと、食料の、生産:砂漠などの、土地でも、太陽光と、水と、大気中のCO2さえあれば、燃料や、食料(デンプンなど)を、生産することが、可能になるかもしれません。