【実践編】プロジェクトの「モニタリングレポート」を読み解くポイント

はじめに:計画(PDD)と、現実(レポート)の、ギャップを見る

以前、私たちは、プロジェクトの「計画書」である、「PDD(プロジェクト設計書)」の、読み解き方を、学びました。

しかし、どれだけ、立派な計画を、立てたとしても、その計画が、実際に、その通りに、実行されなければ、意味がありません。

そこで、重要になるのが、プロジェクト開始後に、定期的に、作成・提出される、「モニタリングレポート(Monitoring Report)」です。

これは、プロジェクトの「活動報告書」であり、「成績表」とも言える、重要な文書です。

今回は、このモニタリングレポートの、どこに注目すれば、プロジェクトの「現実の姿」を、知ることができるのか、そのポイントを、解説します。

モニタリングレポートとは?

モニタリングレポートは、プロジェクト開発者が、一定期間(通常は1年間など)の、プロジェクト活動の結果を、PDDで定めた「モニタリング計画」に、従って、記録・報告するものです。

このレポートに基づいて、第三者の検証機関が、実際のCO2削減・吸収量を、検証し、認証機関が、最終的なクレジット発行量を、決定します。

PDDと同様に、認証機関のレジストリサイトで、公開されています。

モニタリングレポートの、注目すべき4つのポイント

ポイント1:計算された「CO2削減・吸収量」の、最終的な数値

まず、最も重要なのが、この期間中に、実際に、どれだけのCO2が、削減・吸収されたと、計算されているか、その最終的な数値です。

そして、その数値が、PDDで、当初、予測されていた数値と、比べて、どうだったのか。

計画通りだったのか、計画を上回ったのか、あるいは、下回ってしまったのか。

もし、計画を、大幅に、下回っている場合は、その「理由」が、レポート内で、どのように、説明されているかを、注意深く、読む必要があります。

(例:予期せぬ、自然災害があった、地域の、政治情勢が、不安定化した、など)

ポイント2:モニタリングされた、具体的な「生データ」

レポートには、CO2削減量を、計算するために、使用された、具体的な「生データ」が、記載されています。

  • 再エネプロジェクトの場合:実際の「発電量(MWh)」のデータ。
  • 森林プロジェクトの場合:測定された、樹木の「直径」や「高さ」のデータ、森林面積の、変化を示す、衛星画像のデータなど。
  • コンロ普及プロジェクトの場合:実際に、配布されたコンロの「台数」や、各家庭での、薪の「消費量」の、調査データなど。

これらのデータが、詳細に、かつ、透明性高く、示されているか。

データの収集方法が、科学的に、妥当であるか。

こうした点が、プロジェクトの信頼性を、測る上で、重要になります。

ポイント3:「コベネフィット」に関する、活動報告

CO2削減量だけでなく、プロジェクトが、地域社会や、生物多様性に、どのような、ポジティブな影響を、与えたか、その「コベネフィット」に関する、活動報告も、重要なチェックポイントです。

  • 実際に、何人の、地域住民が、雇用されたのか。
  • 収益が、どのように、地域の学校や、診療所の、運営に、役立てられたのか。
  • 生物多様性の、モニタリング調査の、結果はどうだったか。

こうした、定性的な、ストーリーが、具体的に、報告されているか。

写真などが、豊富に、使われているかも、プロジェクトの「顔」が見える、良い指標です。

ポイント4:予期せぬ「ネガティブな影響」は、なかったか

優れたレポートは、ポジティブな側面だけでなく、プロジェクトを、運営する中で、発生した、予期せぬ問題や、ネガティブな影響についても、正直に、報告しています。…