【未来の働き方】「静かな退職(Quiet Quitting)」と、気候変動の、意外な、関係性

はじめに:魂の、抜けた「出社」と、地球の、未来

「静かな退職(Quiet Quitting)」。

この、言葉が、近年、特に、若い世代の、働き方を、象徴する、キーワードとして、注目を、集めています。

これは、実際に、会社を「退職」するわけでは、ありません。

契約で、定められた、最低限の、仕事は、こなすものの、それ以上の、余分な、情熱や、エネルギーを、仕事に、注ぐことを、自発的に「やめる(quit)」という、新しい、働き方の、スタンスを、指します。

一見すると、単なる「やる気のない、社員」の問題に、見えるかもしれません。

しかし、その、根底には、現代の、働き方や、企業文化が、抱える、根深い問題が、横たわっています。

そして、驚くべきことに、この、個人の、働き方の、問題と、気候変動という、地球規模の、課題との間には、意外な「関係性」が、あるのです。

なぜ「静かな退職」は、起きるのか?

若者たちが、仕事への、過剰な、コミットメントを、やめてしまう、その背景には、様々な、要因が、あります。

  • 燃え尽き症候群(バーンアウト):長時間労働や、過度な、プレッシャーによって、心身ともに、疲れ果ててしまう。
  • 仕事への「意味」の、喪失:自分の、行っている仕事が、社会の、役に立っている、という、実感や、会社の、掲げる、パーパス(存在意義)への、共感が、持てない。

    「何のために、こんなに、頑張っているのだろう…」という、虚しさ。

  • ワークライフバランスの、重視:仕事だけが、人生ではない。

    プライベートな、時間や、趣味、家族との、繋がりを、犠牲にしてまで、会社に、尽くす、という、価値観への、疑問。

「気候変動」が、静かな退職を、加速させる?

そして、近年、特に、Z世代などの、若い従業員の間で、この「静かな退職」の、引き金の一つと、なっているのが、勤務先の、企業の「気候変動に対する、姿勢への、失望」です。

気候変動の、危機を、自分ごととして、深刻に、受け止めている、若い世代にとって、

・自社が、大量のCO2を、排出し続けているにもかかわらず、本質的な、対策を、取ろうとしない。

・経営陣が、口先では、サステナビリティを、唱えながら、実際には、短期的な、利益しか、追求していない。

・見せかけだけの「グリーンウォッシュ」的な、活動に、終始している。

こうした、企業の「不誠実さ」や「偽善」は、彼らの、会社に対する、エンゲージメント(愛着や、貢献意欲)を、著しく、低下させます。

「こんな、地球の未来に、無責任な会社のために、自分の、大切な、エネルギーを、これ以上、使いたくない」。

その、失望感が、彼らを「静かな退職」へと、向かわせる、最後の、一押しと、なるのです。

これは、「クライメート・クイッティング(Climate Quitting)」とも、呼ばれる、新しい現象です。

企業は、どう、向き合うべきか?

この、課題に対する、処方箋は、明確です。

企業は、従業員の、エンゲージメントを、維持・向上させたいのであれば、気候変動に対して、本物で、信頼できる、行動を、示すしか、ありません。

  1. 野心的で、科学的な、目標を、掲げる:SBTiの認定を、受けた、野心的な、ネットゼロ目標を、掲げ、その、具体的な「移行計画」を、示すこと。
  2. 従業員を「巻き込む」

【未来の素材】「自己修復コンクリート」とは?生物の、治癒能力に、学ぶ、インフラの、未来

はじめに:傷を、自ら「治す」コンクリート

道路、橋、トンネル、ビル…。

私たちの、現代社会は「コンクリート」という、素材によって、支えられています。

しかし、コンクリートは、経年劣化によって、必ず「ひび割れ(クラック)」が、発生します。

その、小さな、ひび割れから、水や、塩分が、侵入し、内部の、鉄筋を、錆びさせ、構造物全体の、寿命を、縮めてしまう。

その、補修と、維持管理には、毎年、莫大な、コストが、かかっています。

もし、コンクリートが、まるで、生き物のように、自らの「傷(ひび割れ)」を、自動的に、塞ぎ、治癒することが、できたとしたら…?

その、夢のような、技術を、実現しようとするのが、「自己修復コンクリート(Self-healing Concrete)」の研究です。

今回は、この、バイオミミクリー(生物模倣技術)の、最前線について、探ります。

自己修復コンクリートの、主な、仕組み

現在、世界中で、様々な、アプローチの、自己修復コンクリートが、研究されていますが、特に、注目されているのが、「バクテリア」の力を、利用する、方法です。

  1. バクテリアと「エサ」を、仕込む:コンクリートを、練り混ぜる際に、特殊な、バクテリアの「胞子(休眠状態の、バクテリア)」と、その、バクテリアの「エサ」となる、栄養分(乳酸カルシウムなど)を、カプセルに、入れて、一緒に、混ぜ込みます。
  2. ひび割れの、発生と、バクテリアの「覚醒」:コンクリートに、ひび割れが、発生し、そこから、水が、侵入してくると、その水を、トリガーとして、休眠していた、バクテリアの胞子が「覚醒」し、活動を、開始します。
  3. バクテリアによる「治癒」:目覚めた、バクテリアは、同時に、カプセルから、放出された、栄養分を、食べ、代謝活動を、行います。

    その、代謝の、副産物として、「炭酸カルシウム(石灰石)」を、生成します。

  4. ひび割れの、充填:この、バクテリアが、作り出した、炭酸カルシウムが、ひび割れの、隙間を、石のように、硬く、充填し、塞いでいきます。

    まるで、人間が、ケガをした時に、かさぶたが、できて、傷が、治るのと、同じような、プロセスです。

自己修復コンクリートが、もたらす「メリット」

  • インフラの、長寿命化と、維持管理コストの、削減:コンクリート構造物の、寿命が、大幅に、延び、ひび割れの、補修に、かかる、莫大な、コストと、手間を、削減できます。
  • 安全性の、向上:人間が、気づかないような、微細な、ひび割れも、自動的に、修復されるため、構造物の、構造的な、健全性が、維持され、突然の、崩壊などの、リスクを、低減します。
  • 環境負荷の、低減(CO2削減)

    補修材料の、削減:補修に、使う、セメントや、化学薬品の、使用量を、減らすことができます。

    構造物の、長寿命化

【未来の働き方】「クライメート・ワーク」とは?気候変動を、キャリアの、中心に据える

はじめに:全ての「仕事」は、気候変動と、無関係では、いられない

「グリーン・ジョブ」という、言葉が、あります。

これは、再生可能エネルギーや、省エネといった、環境分野の、専門的な職業を、指すことが多いです。

しかし、気候変動の、影響が、社会の、あらゆる側面に、及ぶ、今、もはや、どんな「仕事」も、気候変動と、無関係では、いられません。

そこで、より、広く、全ての、働く人々が、自らの仕事の中に、気候変動への、配慮を、組み込み、社会全体の、脱炭素化に、貢献していく、という、新しい、働き方の、概念が、生まれています。

それが、「クライメート・ワーク(Climate Work)」です。

今回は、この、これからの、働き方の、新しい「当たり前」について、考えてみましょう。

クライメート・ワークの、2つの側面

クライメート・ワークには、大きく分けて、二つの側面が、あります。

側面1:気候変動の、課題解決を「直接」の、目的とする仕事

これは、私たちが、これまで、学んできた、気候変動分野の、専門的なキャリアです。

  • 再生可能エネルギーの、エンジニア
  • カーボンクレジットの、トレーダーや、アナリスト
  • 企業の、サステナビリティ担当者
  • 気候科学の、研究者
  • 環境法の、専門家

これらの仕事は、社会の、脱炭素化を、直接的に、リードする、重要な役割を、担います。

側面2:既存の、あらゆる仕事に「気候の視点」を、組み込む仕事

より、重要で、大きなインパクトを、持つのが、こちらの側面です。

全ての、働く人が、自分の、専門分野や、日常業務の中に、「気候のレンズ」を通して、物事を、考え、行動することです。

  • マーケティング担当者なら:自社製品の、環境性能を、消費者に、分かりやすく、誠実に、伝え、グリーンウォッシュに、陥らない、コミュニケーションを、設計する。
  • 経理・財務担当者なら:インターナル・カーボンプライシング(ICP)の、導入を、支援し、企業の、投資判断が、気候変動リスクを、考慮したものになるように、働きかける。
  • 人事担当者なら:従業員の、気候リテラシーを、高めるための、研修プログラムを、企画したり、従業員の、エコな通勤(自転車通勤など)を、奨励する、福利厚生制度を、作ったりする。
  • ITエンジニアなら:自社が、利用する、ソフトウェアや、クラウドサービスが、環境負荷の少ない、グリーンな、データセンターで、稼働しているかを、チェックする。
  • レストランの、シェフなら:メニューに、地産地消の、旬の食材や、プラントベースの、選択肢を、積極的に、取り入れ、食品ロスを、減らす工夫を、する。

なぜ、クライメート・ワークは、重要なのか?

気候変動という、社会全体の、システムに関わる、大きな課題は、一部の「専門家」だけの、努力では、決して、解決できません。

社会を、構成する、私たち、一人ひとりが、それぞれの、持ち場で、それぞれの、役割の中で、気候変動を「自分ごと」として、捉え、行動を、少しずつ、変えていくこと。

その、無数の、小さな変化の、集合体こそが、社会全体の、大きな、変革を、生み出す、原動力となるのです。

あなたの「仕事」の、意味を、再定義する

【未来の金融】「グリーン・ボンド」はなぜ企業に選ばれるのか?

はじめに:環境と経済を結ぶ「緑の債券」

企業が事業を拡大したり、新しい設備投資を行ったりする際に、資金を調達する方法はいくつかあります。

銀行からの融資(ローン)や、株式を発行して投資家から資金を集める、といった方法が一般的です。

そして、その資金調達の選択肢の中に、近年、急速に存在感を増しているのが、「グリーン・ボンド(Green Bond / 緑の債券)」です。

これは、企業や政府、国際機関などが発行する通常の債券と同じように、利息を支払って満期に元本を返済するという仕組みは変わりません。

しかし、その調達した資金の使途が、環境改善効果のある特定のプロジェクト(グリーンプロジェクト)に限定されているという大きな特徴を持っています。

今回は、このグリーン・ボンドがなぜ企業に選ばれ、環境と経済を結びつける重要な役割を果たしているのか、そのメリットについて解説します。

グリーン・ボンドの主な特徴

  1. 資金使途の限定:最も重要な特徴です。

    調達資金は、再生可能エネルギー、省エネルギー、汚染防止、持続可能な水・廃棄物管理、グリーンビルディング、生物多様性保全など、環境にポジティブな影響を与えるプロジェクトにのみ使用が義務付けられます。

  2. グリーン・ボンド原則への準拠:国際的な金融業界団体が策定した「グリーン・ボンド原則(Green Bond Principles)」に準拠していることが求められます。

    この原則は、資金使途、プロジェクト評価・選定プロセス、資金管理、レポーティングの4つの要素で構成され、グリーン・ボンドの透明性と信頼性を担保します。

  3. 外部レビューの推奨:第三者機関による外部レビュー(セカンドパーティ・オピニオン)を受けることが推奨されます。

    これにより、プロジェクトの環境適合性や、グリーン・ボンド原則への準拠状況について、客観的な評価が得られ、投資家からの信頼性が向上します。

  4. レポーティングの義務:発行体は、調達資金の使途やプロジェクトの環境改善効果について、定期的に投資家に報告する義務を負います。
  5. グリーン・ボンドが企業に選ばれる3つの理由

    1. 資金調達の多様化と投資家層の拡大

    グリーン・ボンドは、従来の投資家層に加えて、ESG投資を重視する機関投資家や個人投資家といった新しい投資家層からの資金を呼び込むことができます。

    これにより、資金調達の選択肢が広がり、より安定した資金調達が可能になります。

  6. 企業イメージ・評判の向上とESG評価の改善:グリーン・ボンドを発行することは、企業が環境問題に積極的に取り組んでいることを金融市場を通じて明確にアピールする強力なメッセージとなります。
  7. これにより、企業のESG評価が向上し、投資家や顧客、従業員からの信頼獲得に繋がります。

    また、優秀な人材の採用にも有利に働きます。

  8. 有利な条件での資金調達(グリーン・プレミアム):需要が供給を上回るグリーン・ボンド市場では、通常の債券よりも低い金利で資金を調達できる場合があります。

    これを

【未来の交通】「MaaS(マース)」は、都市の、移動を、どう、変えるか?

はじめに:移動の「所有」から「利用」へ、という、革命

私たちは、移動しようと、する時、様々な「交通手段」を、個別に、使い分けています。

電車に、乗るためには、駅で、切符を、買い、バスに、乗るためには、バス停で、待ち、タクシーを、捕まえる。

それぞれの、サービスは、分断されており、乗り換えや、支払いは、煩雑です。

もし、これら、全ての、交通手段が、一つの、プラットフォーム上で、シームレスに、統合され、まるで、一つの「サービス」のように、利用できたとしたら…?

その、未来の、交通の、あり方を、実現する、コンセプト。

それが、「MaaS(マース – Mobility as a Service)」です。

今回は、この、MaaSが、私たちの、都市の、移動を、どう、変え、そして、気候変動対策に、どう、貢献するのかを、解説します。

MaaSとは、何か?

MaaSとは、一言でいうと、電車、バス、タクシー、シェアサイクル、カーシェア、オンデマンドバスといった、全ての、公共・民間の、交通サービスを、ICT(情報通信技術)を、活用して、一つの、デジタルな、プラットフォーム(主に、スマートフォンアプリ)に、統合し、ユーザーに、最適な、移動体験を、提供する、という、考え方です。

その、統合の、レベルには、いくつかの、段階が、あります。

  • レベル0:統合なし(現状)。
  • レベル1:情報の、統合:様々な、交通手段の、情報(時刻表、料金など)が、一つの、アプリで、検索できる。
  • レベル2:予約・決済の、統合:検索だけでなく、全ての、交通手段の、予約と、支払いが、一つの、アプリで、完結する。
  • レベル3:サービス提供の、統合:個別の、サービスを、組み合わせた、パッケージ商品(例:公共交通の、乗り放題パスと、カーシェアの、割引クーポン)が、提供される。
  • レベル4:政策との、統合:都市全体の、交通政策として、MaaSが、位置付けられ、価格設定(例:混雑時間帯は、料金を、高くする)などを、通じて、人々の、行動変容を、促す。

MaaSが、もたらす「革命」

MaaSの、普及は、私たちの、移動に、革命的な、変化を、もたらします。

1. ユーザーの、利便性の、飛躍的な、向上

ユーザーは、もはや、複数の、アプリや、ウェブサイトを、使い分ける、必要が、ありません。

出発地と、目的地を、入力するだけで、AIが、リアルタイムの、交通状況に、基づいて、「最速」「最安」「最も、快適」「そして、最も、CO2排出量が、少ない」といった、個人の、好みに、合わせた、最適な、移動ルートと、手段の、組み合わせを、提案してくれます。

2. 「自家用車の、所有」からの、解放

【未来の金融】「自然資本会計」は、国の「豊かさ」の、物差しを、どう、変えるか?

はじめに:GDPでは、測れない「本当の、豊かさ」とは?

私たちは、長年、国の、経済的な「豊かさ」を、測る、主要な指標として、「GDP(国内総生産)」を、使ってきました。

GDPは、一国で、一年間に、生み出された、モノや、サービスの、付加価値の、総額です。

しかし、この、GDPという、物差しには、大きな「欠陥」があることが、以前から、指摘されてきました。

例えば、森林を、大規模に、伐採すれば、木材の、販売額が、増えるため、GDPは、成長します。

しかし、その、代償として、私たちは、CO2吸収源や、生物多様性、水源涵養機能といった、かけがえのない「自然資本」を、失っています。

この、自然資本の、損失(資産の、目減り)は、GDPの、計算には、全く、反映されません。

この、致命的な、欠陥を、是正し、国の「本当の、豊かさ」を、より、正確に、評価するための、新しい、経済指標として、国連などが、導入を、推進しているのが、「自然資本会計(Natural Capital Accounting)」です。

自然資本会計とは?

自然資本会計とは、一言でいうと、国の、経済的な、資産(工場、機械など)と、同じように、その国が、保有する「自然資本(森林、湿地、水資源など)」の、ストック量と、その、変化を、体系的に、測定・記録し、国の、バランスシート(貸借対照表)や、フロー計算書に、統合しよう、という、試みです。

その、目的

  • 自然の、価値の「見える化」:これまで「タダ(無料)」と、見なされ、経済的な、意思決定の、蚊帳の、外に、置かれてきた、自然資本の、重要性を、政策決定者や、国民に、分かりやすく「見える化」します。
  • より、賢明な、政策決定:例えば、ある、湿地を、埋め立てて、工業団地を、建設する、という、計画が、あったとします。

    従来の、費用便益分析では、工業団地が、生み出す、経済的な、便益だけが、考慮されがちでした。

    しかし、自然資本会計の、枠組みでは、その、開発によって、失われる、湿地の「価値」(治水機能、水質浄化機能、生物多様性など)も、金銭換算して、比較衡量するため、より、長期的で、賢明な、意思決定が、可能になります。

  • GDPの、補完:GDPに、自然資本の、減耗分を、加味した、新しい、指標(例:「グリーンGDP」)を、算出することで、国の、経済成長の「質」を、より、正確に、評価することができます。

カーボンクレジット市場との、関係

自然資本会計の、考え方は、カーボンクレジット市場とも、深く、関連しています。

カーボンクレジット、特に、NCS(自然を基盤とした解決策)の、プロジェクトは、まさに、この「自然資本」の、価値を、経済的な、価値へと、転換する、具体的な、メカニズムだからです。

国が、自国の、自然資本会計を、整備し、「我が国の、森林には、これだけの、炭素が、蓄積されており、その価値は、〇〇ドルに、相当する」といった、情報を、正確に、把握すること。

それは、その国が、パリ協定第6条に、基づく、国際的な、クレジット取引に、参加したり、あるいは、国内の、排出量取引制度を、設計したり、する上での、信頼性の高い、科学的な「土台」となります。

まとめ:国の「バランスシート」を、書き換える

自然資本会計の、導入は、私たちが、国の「豊かさ」や「富」を、どう、捉えるか、その、根本的な、パラダイムシフトを、迫るものです。

もはや、目先の、GDPの、成長率だけに、一喜一憂する、時代は、終わりました。

その、成長が、未来の世代から「借りている」貴重な、自然資本という「資産」を、食い潰した上で、成り立っている、見せかけの、成長ではないのか。

その、成長の「質」こそが、問われる時代です。

国の、会計基準が、変われば、政府の、政策が、変わり、企業の、行動が、変わり、そして、社会全体の、価値観が、変わっていきます。

この、静かで、しかし、巨大な「会計革命」の、動向を、注視しておくこと。

それは、これからの、国家の、競争力と、持続可能性の、行方を、占う上で、非常に、重要な、視点と、なるでしょう。…

【未来の農業】「環境再生型農業(リジェネラティブ農業)」の、認証と、ラベル。消費者は、どう、選ぶか?

はじめに:その「オーガニック」、本当に、地球を、再生しているか?

環境と、健康への、意識が、高まる中で、スーパーの、棚には、「オーガニック(有機)」や、「無農薬」といった、表示を、掲げた、食品が、数多く、並ぶように、なりました。

しかし、今、その、さらに、一歩先を、行く、新しい、農業の、価値基準として、「リジェネラティブ(環境再生型)」という、考え方が、注目を、集めています。

リジェネラティブ農業は、単に、化学肥料や、農薬を「使わない」という、マイナスを、ゼロにする、アプローチに、留まりません。

それは、土壌の、健康や、生物多様性を、積極的に「回復」させ、地球の、生態系を、より、豊かな、状態へと「再生」させていく、プラスを、生み出す、農業です。

では、私たち、消費者は、どの、製品が、この、最も、サステナブルな、農法で、作られたものなのかを、どう、見分け、選べば、良いのでしょうか。

今回は、リジェネラティブ農業に関する、新しい「認証」と「ラベル」の、世界について、解説します。

リジェネラティブ農業の、主要な「認証ラベル」

リジェネラティブ農業の、定義や、基準は、まだ、世界的に、完全に、統一されているわけでは、ありません。

しかし、その、普及を、目指す、いくつかの、先進的な、非営利団体が、独自の、厳格な「認証基準」を、作り、消費者が、製品を、選ぶ際の、目印となる「ラベル」を、提供し始めています。

1. Regenerative Organic Certified (ROC)

  • 概要:最も、有名で、包括的な、認証の一つです。

    米国の、オーガニック衣料品ブランド「パタゴニア」などが、中心となって、設立しました。

  • 認証の、3つの柱:ROCの、認証を、受けるためには、既存の、オーガニック認証(米農務省のUSDAオーガニックなど)を、取得していることを「土台」として、さらに、以下の、3つの、厳しい基準を、クリアする、必要が、あります。

    土壌の、健康 (Soil Health):不耕起栽培、被覆作物の、利用など、土壌の、炭素貯留能力と、生物多様性を、高める、具体的な、農法を、実践していること。

    動物福祉 (Animal Welfare):放牧中心の、飼育や、ストレスの少ない、環境など、家畜が、自然な、行動を、取れる、高い、動物福祉基準を、満たしていること。

    社会的な、公正さ (Social Fairness):農場で、働く、労働者に対して、公正な、賃金と、安全な、労働環境を、保証していること。

2. The Savory Institute’s EOV

【未来のエネルギー】「グリーン水素」は、脱炭素社会の、切り札と、なるか?

はじめに:究極の「クリーン燃料」への、期待と挑戦

脱炭素社会を、実現するための、未来の、エネルギーキャリア(エネルギーの運び手)として、今、世界中から、最も、熱い視線を、集めているのが、「水素(H2)」です。

水素は、燃やしても、水(H2O)しか、排出しない、究極の「クリーン燃料」です。

しかし、その、水素もまた、その「作り方」によって、全く、クリーンではなくなる、という、ジレンマを、抱えています。

今回は、その、製造方法によって、色分けされる、水素の、種類、特に、未来の、本命とされる「グリーン水素」の、可能性と、その、実現に向けた、壮大な、挑戦について、解説します。

水素の「色」が、意味するもの

現在、水素は、その、製造プロセスにおける、CO2排出量の、違いによって、主に、以下のような「色」で、分類されています。

  • グレー水素:現在、製造されている、水素の、大部分を、占めるのが、この「グレー水素」です。

    天然ガスなどを、水蒸気と、反応させて、製造しますが、その過程で、多くのCO2を、大気中に、排出します。全く、クリーンでは、ありません。

  • ブルー水素:グレー水素と、同じ方法で、製造しますが、その際に、発生したCO2を、大気中に、放出せず、CCS(二酸化炭素回収・貯留)技術を、使って、回収・地中貯留します。

    グレーよりは、クリーンですが、CO2の、完全な回収は、難しく、コストも、かかります。

  • グリーン水素:そして、究極の、クリーンエネルギーと、されるのが、「グリーン水素」です。

    これは、太陽光や、風力といった、再生可能エネルギーから、作った「電気」を使って、水を、電気分解することで、製造されます。

    製造プロセス全体を通じて、CO2を、一切、排出しません。

グリーン水素は、何が「すごい」のか?

グリーン水素は、脱炭素化が、困難とされる、様々な分野で、ゲームチェンジャーとなる、可能性を、秘めています。

  • 電気を「貯蔵」し、「運ぶ」ことができる:再生可能エネルギーは、天候によって、出力が、変動するという、弱点が、あります。

    再エネが、余った時に、その電力で、グリーン水素を、製造・貯蔵しておけば、電力が、不足した時に、その水素を、使って、発電することができます。

    また、電気のままでは、送電が、難しい、遠隔地(例:砂漠の、太陽光発電所)から、エネルギーを、水素の形で、タンカーなどで、大量に、輸送することも、可能になります。

  • 「電化」が、難しい分野を、脱炭素化する

    重工業:鉄を、作る、製鉄プロセスや、化学製品の、製造には、非常に、高温の熱が、必要です。

    こうした、分野では、化石燃料の、代替として、グリーン水素を、燃焼させて、利用します。

【生物多様性】「TNFD」とは、何か?企業は、自然と、どう、向き合うべきか

はじめに:気候の「TCFD」、自然の「TNFD」

企業の、気候変動への、取り組みを、評価する上で、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」の、提言が、世界的な、スタンダードと、なっていることを、私たちは、学びました。

そして、今、その「気候」の、隣にある、もう一つの、巨大な、地球規模の危機、すなわち「自然資本の、損失と、生物多様性の、劣化」に対して、TCFDと、同じような、情報開示の、枠組みを、作ろう、という、動きが、急速に、進んでいます。

それが、「TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures / 自然関連財務情報開示タスクフォース)」です。

今回は、この、これからの、サステナビリティ経営の、新しい「常識」となる、TNFDの、目的と、その、枠組みについて、解説します。

TNFDとは、何か?

TNFDは、企業や、金融機関が、自社の、事業活動が、自然資本(森林、水、土壌、生物多様性など)に、どのように「依存」し、どのような「影響」を与えているのか、そして、それが、自社の、ビジネスに、どのような「リスク」と「機会」を、もたらすのかを、評価・開示するための、国際的な、枠組みを、開発・提言する、イニシアチブです。

その、基本的な、構造は、TCFDの、枠組みを、踏襲しており、「ガバナンス」「戦略」「リスクとインパクトの管理」「指標と目標」という、4つの、柱で、構成されています。

なぜ、今、TNFDが、必要なのか?

私たちの、経済活動は、実は、自然が、もたらしてくれる、様々な「恵み(生態系サービス)」の上に、成り立っています。

例えば、農業は、ミツバチによる、花粉の媒介や、健康な土壌に、依存しています。

製薬会社は、新しい薬の、原料となる、多様な、遺伝子資源を、自然界から、得ています。

しかし、人間活動によって、これらの、自然資本が、急速に、劣化することで、企業の、事業活動そのものが、立ち行かなくなる、という「物理的リスク」が、高まっています。

また、生物多様性を、損なう、企業に対する、政府の、規制強化や、消費者・投資家からの、厳しい目(評判リスク)といった「移行リスク」も、増大しています。

TNFDは、企業が、こうした、これまで「見過ごされてきた」自然関連の、リスクと、機会を、きちんと、経営の、意思決定に、組み込むことを、促すための、ツールなのです。

TNFDが、企業に、求める「LEAPアプローチ」

TNFDは、企業が、自然関連の、リスクと機会を、評価するための、具体的な、分析プロセスとして、「LEAPアプローチ」を、提唱しています。

  • L (Locate) – 発見する:自社の、事業活動と、自然との「接点」が、どこにあるのかを、地理的に、特定します。

    (例:自社の工場は、どこにあるか?

    原材料は、どの地域の、生態系から、調達しているか?

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