【企業の倫理】「フェアトレード」と、カーボンクレジットの、共通点と、相乗効果

はじめに:公正な「取引」が、人と、地球を、救う

スーパーの、コーヒーや、チョコレートの、棚で、「フェアトレード(Fair Trade / 公正な取引)」という、認証ラベルを、目にしたことが、ある人は、多いでしょう。

開発途上国の、小規模な、生産者に対して、不利な条件を、強いるのではなく、彼らの、労働に、見合った、公正な、価格で、製品を、買い取ることで、その、生活の、自立を、支援しよう、という、倫理的な、消費の、ムーブメントです。

この、フェアトレードの、考え方と、私たちが、学んできた「カーボンクレジット」の、仕組み。

実は、この二つには、多くの「共通点」があり、両者が、連携することで、素晴らしい「相乗効果」を、生み出す、可能性が、あるのです。

今回は、その、関係性について、探ります。

フェアトレードと、カーボンクレジットの「共通の哲学」

両者の、根底に、流れているのは、市場の、メカニズムを通じて、開発途上国の、生産者が、抱える、社会・環境問題を、解決しよう、という、共通の、哲学です。

  • エンパワーメント(能力強化):単なる、一方的な「寄付」や「援助」では、ありません。

    生産者自身が、質の高い、製品や、環境価値を、生み出し、それを、公正な、価格で、販売することで、経済的に「自立」し、自らの力で、未来を、切り拓いていくことを、支援します。

  • 情報の、透明性:消費者が、自分が、購入する、製品や、クレジットが、どこで、誰によって、どのような、環境・社会的な、配慮の、下で、作られたのか、その、背景にある「物語」を、知ることができる、トレーサビリティ(追跡可能性)と、透明性を、重視します。
  • 消費者による「投票」:私たち、消費者が、フェアトレード認証製品や、質の高いカーボンクレジットを、意識的に「選んで、買う」という、購買行動。

    それが、より、倫理的で、持続可能な、生産者を、応援し、市場全体を、良い方向へと、変えていく「一票」となる、という、考え方です。

「フェアトレード・カーボンクレジット」という、相乗効果

この、二つの、仕組みが、結びついた時、そこに、非常に、パワフルな、相乗効果が、生まれます。

その、代表的な、取り組みが、「フェアトレード気候基準(Fairtrade Climate Standard)」です。

これは、フェアトレードの、認証を、受けている、開発途上国の、小規模農家たちが、創出した、カーボンクレジットに対して、特別な「付加価値」を、与える、仕組みです。

その、仕組みと、メリット

  1. 農家による、CO2削減プロジェクト:フェアトレードの、コーヒー農家たちが、協同組合を、作り、アグロフォレストリー(森林農業)や、リジェネラティブ農業を、導入したり、地域の、森林を、保全したり、といった、CO2削減・吸収プロジェクトを、実施します。
  2. クレジットの、発行と、販売:その、成果が、Gold Standardなどの、厳格な、基準で、認証され、「カーボンクレジット」として、発行されます。
  3. 「フェアトレード最低価格」と「プレミアム」:そして、ここが、重要な点です。

    この、クレジットが、市場で、取引される際には、通常の、市場価格に、加えて、生産者の、持続可能な、生計を、保証するための「フェアトレード最低価格」が、設定されます。

【企業の倫理】「人権デューデリジェンス」とは?サプライチェーンに、潜む、人権リスクに、どう、向き合うか

はじめに:その「安さ」は、誰かの「犠牲」の上に、成り立っていないか?

私たちが、日常的に、手にする、スマートフォン、衣類、食品…。

その、多くが、グローバルな「サプライチェーン(供給網)」を通じて、世界中の、国々から、私たちの、元へ、届けられています。

しかし、その、複雑で、見えにくい、サプライチェーンの、川上の、どこかで、児童労働や、強制労働、非人道的な、低賃金、危険な、労働環境といった、深刻な「人権侵害」が、行われている、としたら…?

そして、その、製品を、販売している、あなたの会社は、「知らなかった」では、済まされない、重い、責任を、問われるとしたら…?

このように、企業が、自社の、事業活動だけでなく、その、サプライチェーン全体に、潜む、人権への、負の影響を、特定・評価し、それを、防止・軽減するための、継続的な、取り組み

それが、「人権デューデリジェンス(Human Rights Due Diligence)」です。

なぜ「人権デューデリジェンス」は、不可欠なのか?

今や、人権デューデリジェンスは、企業の、倫理的な「任意」の、取り組みでは、なくなりつつあります。

欧州を、中心に、企業に対して、その、実施を、法的に「義務」付ける、動きが、急速に、広がっています。

(例:ドイツの「サプライチェーン法」、EUの「企業持続可能性デューデリジェンス指令」など)

これを、怠ることは、企業に、深刻な、経営リスクを、もたらします。

  • 法的リスク:法律に、違反した場合、多額の、罰金や、制裁を、科される。
  • 評判リスク:サプライチェーンでの、人権侵害が、NGOや、メディアによって、暴露されれば、大規模な、不買運動に、発展し、ブランド価値が、致命的な、ダメージを、受ける。
  • 事業リスク:人権侵害が、行われている、サプライヤーとの、取引が、停止に、追い込まれ、製品の、生産が、ストップしてしまう。

人権デューデリジェンスの、プロセス

国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」などが、示す、その、プロセスは、TCFDや、TNFDの、アプローチとも、共通しています。

  1. 方針の、策定と、浸透:まず、企業として「人権を、尊重する」という、明確な、方針を、策定し、それを、取締役会の、監督の下、社内全体、そして、サプライヤーにまで、浸透させます。
  2. リスクの、特定と、評価:自社の、事業や、サプライチェーンの中で、どこに、どのような、人権リスクが、潜在しているかを、特定し、その、深刻度を、評価します。

    (例:特定の、国や、原材料、あるいは、特定の、労働集約的な、工程など)

  3. 影響の、防止と、軽減:特定された、リスクを、防止・軽減するための、具体的な、措置を、講じます。

    (例:サプライヤーに対する、行動規範の、策定と、監査の、実施、労働者への、直接の、聞き取り調査など)

  4. 追跡調査(モニタリング):講じた、措置が、効果的に、機能しているかを、継続的に、追跡・監視します。
  5. 情報開示(コミュニケーション)

【未来の金融】「自然資本会計」は、国の「豊かさ」の、物差しを、どう、変えるか?

はじめに:GDPでは、測れない「本当の、豊かさ」とは?

私たちは、長年、国の、経済的な「豊かさ」を、測る、主要な指標として、「GDP(国内総生産)」を、使ってきました。

GDPは、一国で、一年間に、生み出された、モノや、サービスの、付加価値の、総額です。

しかし、この、GDPという、物差しには、大きな「欠陥」があることが、以前から、指摘されてきました。

例えば、森林を、大規模に、伐採すれば、木材の、販売額が、増えるため、GDPは、成長します。

しかし、その、代償として、私たちは、CO2吸収源や、生物多様性、水源涵養機能といった、かけがえのない「自然資本」を、失っています。

この、自然資本の、損失(資産の、目減り)は、GDPの、計算には、全く、反映されません。

この、致命的な、欠陥を、是正し、国の「本当の、豊かさ」を、より、正確に、評価するための、新しい、経済指標として、国連などが、導入を、推進しているのが、「自然資本会計(Natural Capital Accounting)」です。

自然資本会計とは?

自然資本会計とは、一言でいうと、国の、経済的な、資産(工場、機械など)と、同じように、その国が、保有する「自然資本(森林、湿地、水資源など)」の、ストック量と、その、変化を、体系的に、測定・記録し、国の、バランスシート(貸借対照表)や、フロー計算書に、統合しよう、という、試みです。

その、目的

  • 自然の、価値の「見える化」:これまで「タダ(無料)」と、見なされ、経済的な、意思決定の、蚊帳の、外に、置かれてきた、自然資本の、重要性を、政策決定者や、国民に、分かりやすく「見える化」します。
  • より、賢明な、政策決定:例えば、ある、湿地を、埋め立てて、工業団地を、建設する、という、計画が、あったとします。

    従来の、費用便益分析では、工業団地が、生み出す、経済的な、便益だけが、考慮されがちでした。

    しかし、自然資本会計の、枠組みでは、その、開発によって、失われる、湿地の「価値」(治水機能、水質浄化機能、生物多様性など)も、金銭換算して、比較衡量するため、より、長期的で、賢明な、意思決定が、可能になります。

  • GDPの、補完:GDPに、自然資本の、減耗分を、加味した、新しい、指標(例:「グリーンGDP」)を、算出することで、国の、経済成長の「質」を、より、正確に、評価することができます。

カーボンクレジット市場との、関係

自然資本会計の、考え方は、カーボンクレジット市場とも、深く、関連しています。

カーボンクレジット、特に、NCS(自然を基盤とした解決策)の、プロジェクトは、まさに、この「自然資本」の、価値を、経済的な、価値へと、転換する、具体的な、メカニズムだからです。

国が、自国の、自然資本会計を、整備し、「我が国の、森林には、これだけの、炭素が、蓄積されており、その価値は、〇〇ドルに、相当する」といった、情報を、正確に、把握すること。

それは、その国が、パリ協定第6条に、基づく、国際的な、クレジット取引に、参加したり、あるいは、国内の、排出量取引制度を、設計したり、する上での、信頼性の高い、科学的な「土台」となります。

まとめ:国の「バランスシート」を、書き換える

自然資本会計の、導入は、私たちが、国の「豊かさ」や「富」を、どう、捉えるか、その、根本的な、パラダイムシフトを、迫るものです。

もはや、目先の、GDPの、成長率だけに、一喜一憂する、時代は、終わりました。

その、成長が、未来の世代から「借りている」貴重な、自然資本という「資産」を、食い潰した上で、成り立っている、見せかけの、成長ではないのか。

その、成長の「質」こそが、問われる時代です。

国の、会計基準が、変われば、政府の、政策が、変わり、企業の、行動が、変わり、そして、社会全体の、価値観が、変わっていきます。

この、静かで、しかし、巨大な「会計革命」の、動向を、注視しておくこと。

それは、これからの、国家の、競争力と、持続可能性の、行方を、占う上で、非常に、重要な、視点と、なるでしょう。…

【未来の農業】「環境再生型農業(リジェネラティブ農業)」の、認証と、ラベル。消費者は、どう、選ぶか?

はじめに:その「オーガニック」、本当に、地球を、再生しているか?

環境と、健康への、意識が、高まる中で、スーパーの、棚には、「オーガニック(有機)」や、「無農薬」といった、表示を、掲げた、食品が、数多く、並ぶように、なりました。

しかし、今、その、さらに、一歩先を、行く、新しい、農業の、価値基準として、「リジェネラティブ(環境再生型)」という、考え方が、注目を、集めています。

リジェネラティブ農業は、単に、化学肥料や、農薬を「使わない」という、マイナスを、ゼロにする、アプローチに、留まりません。

それは、土壌の、健康や、生物多様性を、積極的に「回復」させ、地球の、生態系を、より、豊かな、状態へと「再生」させていく、プラスを、生み出す、農業です。

では、私たち、消費者は、どの、製品が、この、最も、サステナブルな、農法で、作られたものなのかを、どう、見分け、選べば、良いのでしょうか。

今回は、リジェネラティブ農業に関する、新しい「認証」と「ラベル」の、世界について、解説します。

リジェネラティブ農業の、主要な「認証ラベル」

リジェネラティブ農業の、定義や、基準は、まだ、世界的に、完全に、統一されているわけでは、ありません。

しかし、その、普及を、目指す、いくつかの、先進的な、非営利団体が、独自の、厳格な「認証基準」を、作り、消費者が、製品を、選ぶ際の、目印となる「ラベル」を、提供し始めています。

1. Regenerative Organic Certified (ROC)

  • 概要:最も、有名で、包括的な、認証の一つです。

    米国の、オーガニック衣料品ブランド「パタゴニア」などが、中心となって、設立しました。

  • 認証の、3つの柱:ROCの、認証を、受けるためには、既存の、オーガニック認証(米農務省のUSDAオーガニックなど)を、取得していることを「土台」として、さらに、以下の、3つの、厳しい基準を、クリアする、必要が、あります。

    土壌の、健康 (Soil Health):不耕起栽培、被覆作物の、利用など、土壌の、炭素貯留能力と、生物多様性を、高める、具体的な、農法を、実践していること。

    動物福祉 (Animal Welfare):放牧中心の、飼育や、ストレスの少ない、環境など、家畜が、自然な、行動を、取れる、高い、動物福祉基準を、満たしていること。

    社会的な、公正さ (Social Fairness):農場で、働く、労働者に対して、公正な、賃金と、安全な、労働環境を、保証していること。

2. The Savory Institute’s EOV

【生物多様性】「TNFD」とは、何か?企業は、自然と、どう、向き合うべきか

はじめに:気候の「TCFD」、自然の「TNFD」

企業の、気候変動への、取り組みを、評価する上で、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」の、提言が、世界的な、スタンダードと、なっていることを、私たちは、学びました。

そして、今、その「気候」の、隣にある、もう一つの、巨大な、地球規模の危機、すなわち「自然資本の、損失と、生物多様性の、劣化」に対して、TCFDと、同じような、情報開示の、枠組みを、作ろう、という、動きが、急速に、進んでいます。

それが、「TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures / 自然関連財務情報開示タスクフォース)」です。

今回は、この、これからの、サステナビリティ経営の、新しい「常識」となる、TNFDの、目的と、その、枠組みについて、解説します。

TNFDとは、何か?

TNFDは、企業や、金融機関が、自社の、事業活動が、自然資本(森林、水、土壌、生物多様性など)に、どのように「依存」し、どのような「影響」を与えているのか、そして、それが、自社の、ビジネスに、どのような「リスク」と「機会」を、もたらすのかを、評価・開示するための、国際的な、枠組みを、開発・提言する、イニシアチブです。

その、基本的な、構造は、TCFDの、枠組みを、踏襲しており、「ガバナンス」「戦略」「リスクとインパクトの管理」「指標と目標」という、4つの、柱で、構成されています。

なぜ、今、TNFDが、必要なのか?

私たちの、経済活動は、実は、自然が、もたらしてくれる、様々な「恵み(生態系サービス)」の上に、成り立っています。

例えば、農業は、ミツバチによる、花粉の媒介や、健康な土壌に、依存しています。

製薬会社は、新しい薬の、原料となる、多様な、遺伝子資源を、自然界から、得ています。

しかし、人間活動によって、これらの、自然資本が、急速に、劣化することで、企業の、事業活動そのものが、立ち行かなくなる、という「物理的リスク」が、高まっています。

また、生物多様性を、損なう、企業に対する、政府の、規制強化や、消費者・投資家からの、厳しい目(評判リスク)といった「移行リスク」も、増大しています。

TNFDは、企業が、こうした、これまで「見過ごされてきた」自然関連の、リスクと、機会を、きちんと、経営の、意思決定に、組み込むことを、促すための、ツールなのです。

TNFDが、企業に、求める「LEAPアプローチ」

TNFDは、企業が、自然関連の、リスクと機会を、評価するための、具体的な、分析プロセスとして、「LEAPアプローチ」を、提唱しています。

  • L (Locate) – 発見する:自社の、事業活動と、自然との「接点」が、どこにあるのかを、地理的に、特定します。

    (例:自社の工場は、どこにあるか?

    原材料は、どの地域の、生態系から、調達しているか?

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