【実践編】どう読む?プロジェクト設計書(PDD)のポイント

はじめに:一次情報にアクセスする力

カーボンクレジットのプロジェクトを選ぶ際、多くの人はプラットフォームが提供する要約情報に頼りがちです。

しかし、一歩進んだ投資家や、本当にそのプロジェクトの質を確かめたいと考えるなら、その「大元」となる一次情報、すなわち「プロジェクト設計書(PDD – Project Design Document)」を読んでみることをお勧めします。

英語で書かれた、数百ページにも及ぶ難解な文書ですが、ポイントさえ押さえれば、個人でも重要な情報を読み解くことは可能です。

今回は、PDDのどこに注目すべきか、その読み解き方のコツを伝授します。

PDDとは?どこで手に入る?

PDDは、プロジェクト開発者が、認証機関(Verraなど)のルール(方法論)に従って、「このプロジェクトが、いかにしてCO2を削減するのか」を詳細に記述した計画書です。

信頼できるプロジェクトであれば、そのPDDは、VerraやGold Standardの「レジストリ(登録簿)」サイトで公開されており、誰でも無料でダウンロードできます。

プロジェクトのIDなどで検索してみましょう。

PDDの注目すべき5つのセクション

全てを読む必要はありません。

まずは以下のセクションの概要を、翻訳ツールなども活用しながら掴んでみましょう。

1. プロジェクトの概要 (Project Description)

  • 何を見るか?:プロジェクトが「どこで(国、地域)」「何を(植林、再エネなど)」「なぜ」行うのか、その基本的な情報が書かれています。

    プロジェクトの目的や、現地の抱える課題などを理解できます。

2. 追加性の証明 (Additionality)

  • 何を見るか?:PDDの中で最も重要なセクションの一つです。

    「なぜこのプロジェクトは、カーボンクレジットからの収入がなければ実現できないのか」という「追加性」の論理が、詳細に説明されています。

    投資分析(投資回収年が長すぎるなど)や、障壁分析(技術的な障壁、社会的な反対など)といった、具体的な根拠が示されているかを確認します。

3. CO2削減量の計算方法 (Quantification of GHG Emission Reductions)

  • 何を見るか?:プロジェクトが削減するCO2の量を、どのような計算式で算出するのかが記述されています。

【品質の見極め方】質の高い「森林保全(REDD+)」プロジェクト、5つのチェックリスト

はじめに:玉石混交の「森」から、本物の「宝」を、見つけ出す

カーボンクレジット市場において、最も、人気があり、かつ、最も、議論の的となってきたのが、「REDD+(森林減少・劣化からの排出削減)」プロジェクトです。

その中には、ケニアの「カシガウ・コリドー」のような、素晴らしい成功事例もあれば、残念ながら、その効果や、持続可能性に、疑問符が付くような、質の低いプロジェクトも、存在します。

では、私たち、個人投資家は、この「玉石混交」の中から、いかにして、本当に、価値のある、質の高いREDD+プロジェクトを、見極めれば、良いのでしょうか。

今回は、そのための、具体的な「5つのチェックリスト」を、ご紹介します。

高品質なREDD+プロジェクト、5つのチェックリスト

✅ 1. ベースラインは、保守的で、説得力があるか?

REDD+の、CO2削減量は、「もし、プロジェクトがなかったら、どれだけの森林が、失われていたか」という「ベースライン」の、設定に、大きく依存します。

  • チェックポイント

    ・ベースラインの、設定方法は、透明性が高く、公開されているか?

    ・その地域の、過去の、森林減少のトレンドだけでなく、将来の、開発圧力(人口増加、道路建設計画など)も、考慮されているか?

    ・意図的に、森林破壊の予測を、過大に、見積もることで、クレジット量を、水増ししようとしていないか?

    その設定は、第三者から見ても、客観的で、説得力のあるものか?

✅ 2. リーケージ(漏出)への、対策は、十分か?

プロジェクトエリア内の、伐採を、止めた結果、その活動が、単に、隣のエリアに、移動(リーケージ)しただけでは、意味がありません。

  • チェックポイント

    ・プロジェクトは、リーケージのリスクを、認識し、その影響を、定量的に、評価しているか?

    ・削減量から、リーケージ分を、きちんと、差し引いているか?

    ・プロジェクトの、境界周辺地域まで含めて、広範囲な、モニタリングを、行っているか?

    ・伐採に、代わる、持続可能な、収入源を、地域住民に、提供することで、リーケージの、根本原因に、対処しようとしているか?

✅ 3. 地域コミュニティが、真の「パートナー」になっているか?

プロジェクトの、長期的な成功は、地域コミュニティとの、信頼関係なくして、あり得ません。

  • チェックポイント

    ・FPIC(自由で、事前の、十分な情報に基づく同意)の、プロセスは、適切に、実施されているか?

    ・プロジェクトの、意思決定の場に、地域住民の、代表は、参加しているか?

    ・クレジット販売による、収益の、分配メカニズムは、公平で、透明性が高いか?

    ・プロジェクトが、彼らの、伝統的な、土地の権利や、文化を、尊重しているか?

✅ 4. コベネフィットは、具体的で、測定可能か?

「生物多様性」や、「貧困削減」といった、コベネフィットは、プロジェクトの、価値を、大きく高めます。…