はじめに:Z世代は会社を「選ぶ」
「給料が高いから」。
「安定しているから」。
かつて、多くの人が会社を選ぶ主要な理由だったこれらの要素は、今、特にZ世代(1990年代後半〜2010年代初頭生まれ)を中心とする若い世代にとって、もはや絶対的なものではありません。
彼らが会社を選ぶ最も重要な基準の一つ。
それは、その会社が社会に対してどのような「パーパス(存在意義)」を持っているのか、そして気候変動という人類共通の課題に対してどれだけ「本気」で取り組んでいるのかです。
気候変動は、もはや企業の、人材戦略において無視できない重要な要素となっています。
今回は、企業が優秀な人材を惹きつけ、定着させるために、気候変動にどう向き合うべきか、その戦略について解説します。
気候変動が人材戦略に与える3つの影響
1. 採用競争力の低下
気候変動対策に消極的な企業は、優秀な人材から選ばれなくなります。
- Z世代の価値観:彼らは生まれた時から気候変動の危機を知っており、社会課題への意識が非常に高いです。
自分の働く会社が地球環境に負の影響を与えていると知れば、そこで働くことに強い抵抗を感じます。
- 「クライメート・クイッティング」の増加:すでに、入社している従業員が、自社の気候変動への姿勢に失望し、「静かな退職(Quiet Quitting)」や、実際に退職してしまうという現象が起きています。
2. 従業員のエンゲージメントの低下
気候変動への取り組みが不十分な企業では、従業員の仕事への熱意や貢献意欲が低下します。
- パーパスの欠如:自分の仕事が社会に貢献しているという実感が持てず、仕事へのモチベーションが低下します。
- 倫理的ジレンマ:環境に配慮したいという個人の価値観と、会社の事業活動との間で倫理的なジレンマを抱え、ストレスを感じます。
3. スキルギャップの拡大
脱炭素化への移行は、新しい技術やビジネスモデルを生み出し、それに、対応できる新しいスキルを必要とします。
- リスキリングの遅れ:企業が従業員のリスキリング(学び直し)を怠れば、必要なスキルを持つ人材が不足し、事業の変革が遅れます。
気候変動を人材戦略の「武器」にする3つの戦略
1. 野心的な「パーパス」を掲げ、行動する
単なる利益追求だけでなく、気候変動という人類共通の課題解決に貢献するという明確な「パーパス」を掲げ、それを言葉だけでなく具体的な行動で示すこと。
- SBTi認定のネットゼロ目標:科学的根拠に基づく野心的な削減目標を設定し、その移行計画を透明性高く開示する。
- 質の高いカーボンクレジットの活用:自社の削減努力を最大限行った上で、残余排出量を質の高い除去クレジットで中和する。