はじめに:一杯で、二度おいしい。そんな貢献がある
カーボンクレジットを購入する主な目的は、もちろん「CO2を削減・吸収し、気候変動を食い止めること」です。
しかし、優れたプロジェクトは、その主目的に加えて、まるで美味しいコーヒーの「サイドメニュー」のように、地域社会や自然環境に対して、様々な「良いこと」を同時にもたらします。
この、副次的な良い効果のことを、専門用語で「コベネフィット(Co-benefits / 共同便益)」と呼びます。
今回は、このコベネフィットの世界を覗いてみましょう。
コベネフィットの具体例
プロジェクトの種類によって、生まれるコベネフィットは様々です。
【ケース1】途上国の「森林保護」プロジェクト
このプロジェクトは、CO2を吸収するだけでなく…。
- 生物多様性の保全:そこに生息する希少な動植物のすみかを守ります。
(SDGs目標15)
- 雇用の創出:地域住民を森林パトロール隊員として雇用したり、エコツアーのガイドとして育成したりします。
(SDGs目標8)
- 貧困の削減:持続可能な農法を教えることで、地域の食料安全保障と安定した収入に繋がります。
(SDGs目標1, 2)
【ケース2】アフリカの「安全な水」プロジェクト
このプロジェクトは、汚れた水を浄化するフィルターを普及させ、薪を燃やして水を煮沸殺菌する必要性をなくすことでCO2を削減するだけでなく…。
- 健康と福祉の向上:汚染された水が原因で起こる病気から、特に子供たちの命を守ります。
(SDGs目標3)
- 教育の機会創出:これまで毎日何時間も水汲みに行っていた子供たちが、学校に通う時間を得られます。
(SDGs目標4)
- ジェンダー平等の推進:水汲みという重労働から女性を解放し、彼女たちが他の仕事や活動に参加する機会を創出します。
(SDGs目標5)
【ケース3】インドの「再生可能エネルギー(風力発電)」プロジェクト
このプロジェクトは、化石燃料に代わるクリーンな電力を生み出すだけでなく…。
- 大気汚染の改善:石炭火力発電所などから排出される、健康に有害な大気汚染物質を削減し、地域住民の呼吸器疾患のリスクを低減します。
(SDGs目標3, 11)
- エネルギーの安定供給:これまで頻繁に停電が起きていた地域に、安定した電力を供給し、地域の産業や教育の発展を支えます。
(SDGs目標7, 9)
コベネフィットをどうやって見分ける?
質の高いコベネフィットを生み出すプロジェクトは、その価値が客観的に評価・認証されていることが多いです。
- Gold Standard:この認証は、コベネフィット(SDGsへの貢献)を生み出すことを必須条件としており、その評価が非常に厳しいことで知られています。
- Verraの追加認証:Verra(VCS)のプロジェクトの中にも、「CCB Standards(気候・地域社会・生物多様性基準)」や「SD VISta(持続可能な開発インパクト基準)」といった、コベネフィットに特化した追加の認証を受けているものがあります。
まとめ:あなたの投資価値を「最大化」する視点
同じ1トンのCO2削減でも、その背景にある物語や、社会に与えるインパクトは、プロジェクトによって大きく異なります。
プロジェクトを選ぶ際に、「このクレジットは、どんなコベネフィットをもたらすのだろう?
」という視点を加えてみてください。
それは、あなたの投資や貢献の「価値」を、何倍にも、何十倍にも高めてくれる、魔法の質問なのです。
気候変動の解決と、より公平で豊かな社会の実現。
その両方に、あなたの一票を投じてみませんか。