はじめに:数字の先にある「物語」に投資する
数あるカーボンクレジットプロジェクトの中から、一つを選ぶ。
それは、単なる金融商品を選ぶのとは少し違います。
そのクレジットの向こう側にある、人々の暮らしや、守られるべき自然の「物語」に、自分の思いを託す行為だからです。
今回は、ある個人投資家Aさんが、なぜ南米の「森林保護プロジェクト」のクレジットを選んだのか、その購入事例を通じて、プロジェクト選びの楽しさと奥深さをご紹介します。
Aさんの投資家プロフィール
- 年代:30代・会社員
- 投資経験:株式投資(インデックス中心)5年
- カーボンクレジットへの関心:環境問題への貢献と、長期的な資産形成の両立に魅力を感じている。
なぜ、このプロジェクトを選んだのか?
Aさんが最終的に選んだのは、南米の熱帯雨林で、地域コミュニティと協力しながら違法伐採を防ぐプロジェクトでした。
彼がこのプロジェクトに惹かれた理由は、3つあります。
理由1:失われゆく自然への危機感
Aさんは学生時代に見たドキュメンタリー番組で、熱帯雨林の減少が地球環境に与える深刻な影響を知り、強い衝撃を受けました。
「いつか、何か自分にもできることはないか」。
その長年の思いが、このプロジェクトを知ったことで、具体的な投資行動へと繋がりました。
彼は、このプロジェクトのクレジットを買うことが、自分が昔から抱いていた問題意識への、一つの「答え」だと感じたのです。
理由2:生物多様性への貢献という「付加価値」
このプロジェクトは、CO2削減効果で「Verra」の認証を受けているだけでなく、生物多様性の保全に関する追加的な認証(CCB Standards)も取得していました。
プロジェクトの資料には、そこに生息するジャガーやコンゴウインコといった、絶滅の危機にある動物たちの写真が掲載されていました。
Aさんは、「自分の投資が、CO2を減らすだけでなく、この美しい動物たちのすみかを守ることにも繋がる」という点に、大きな価値と魅力を感じました。
理由3:地域社会の自立を支援するストーリー
このプロジェクトは、ただ森林を監視するだけではありません。
クレジット販売で得た収益を元に、地域住民に対して、持続可能なカカオ栽培やエコツアーのガイドといった、新しい仕事のトレーニングを提供していました。
森を伐採するよりも、森を守る方が、地域の人々の生活が豊かになる。
そんな、環境保全と地域経済の自立を両立させる、ポジティブな循環を生み出すストーリーに、Aさんは深く共感したのです。
まとめ:あなたの「共感」が、最高の選択基準
Aさんの事例は、カーボンクレジット選びが、単なるデータや利回りの比較だけではないことを教えてくれます。
もちろん、信頼できる認証を受けている、という大前提は重要です。
しかしその上で、最後にあなたの心を動かすのは、プロジェクトが持つ独自の「物語」や「価値観」ではないでしょうか。
あなたが大切にしたいものは何ですか?
守りたい未来はどんな景色ですか?
その問いへの答えが、あなたにとって最高のプロジェクトを見つけるための、一番の近道になるはずです。