はじめに:魂の、抜けた「出社」と、地球の、未来
「静かな退職(Quiet Quitting)」。
この、言葉が、近年、特に、若い世代の、働き方を、象徴する、キーワードとして、注目を、集めています。
これは、実際に、会社を「退職」するわけでは、ありません。
契約で、定められた、最低限の、仕事は、こなすものの、それ以上の、余分な、情熱や、エネルギーを、仕事に、注ぐことを、自発的に「やめる(quit)」という、新しい、働き方の、スタンスを、指します。
一見すると、単なる「やる気のない、社員」の問題に、見えるかもしれません。
しかし、その、根底には、現代の、働き方や、企業文化が、抱える、根深い問題が、横たわっています。
そして、驚くべきことに、この、個人の、働き方の、問題と、気候変動という、地球規模の、課題との間には、意外な「関係性」が、あるのです。
なぜ「静かな退職」は、起きるのか?
若者たちが、仕事への、過剰な、コミットメントを、やめてしまう、その背景には、様々な、要因が、あります。
- 燃え尽き症候群(バーンアウト):長時間労働や、過度な、プレッシャーによって、心身ともに、疲れ果ててしまう。
- 仕事への「意味」の、喪失:自分の、行っている仕事が、社会の、役に立っている、という、実感や、会社の、掲げる、パーパス(存在意義)への、共感が、持てない。
「何のために、こんなに、頑張っているのだろう…」という、虚しさ。
- ワークライフバランスの、重視:仕事だけが、人生ではない。
プライベートな、時間や、趣味、家族との、繋がりを、犠牲にしてまで、会社に、尽くす、という、価値観への、疑問。
「気候変動」が、静かな退職を、加速させる?
そして、近年、特に、Z世代などの、若い従業員の間で、この「静かな退職」の、引き金の一つと、なっているのが、勤務先の、企業の「気候変動に対する、姿勢への、失望」です。
気候変動の、危機を、自分ごととして、深刻に、受け止めている、若い世代にとって、
・自社が、大量のCO2を、排出し続けているにもかかわらず、本質的な、対策を、取ろうとしない。
・経営陣が、口先では、サステナビリティを、唱えながら、実際には、短期的な、利益しか、追求していない。
・見せかけだけの「グリーンウォッシュ」的な、活動に、終始している。
こうした、企業の「不誠実さ」や「偽善」は、彼らの、会社に対する、エンゲージメント(愛着や、貢献意欲)を、著しく、低下させます。
「こんな、地球の未来に、無責任な会社のために、自分の、大切な、エネルギーを、これ以上、使いたくない」。
その、失望感が、彼らを「静かな退職」へと、向かわせる、最後の、一押しと、なるのです。
これは、「クライメート・クイッティング(Climate Quitting)」とも、呼ばれる、新しい現象です。
企業は、どう、向き合うべきか?
この、課題に対する、処方箋は、明確です。
企業は、従業員の、エンゲージメントを、維持・向上させたいのであれば、気候変動に対して、本物で、信頼できる、行動を、示すしか、ありません。
- 野心的で、科学的な、目標を、掲げる:SBTiの認定を、受けた、野心的な、ネットゼロ目標を、掲げ、その、具体的な「移行計画」を、示すこと。
- 従業員を「巻き込む」:気候変動対策を、一部の、サステナビリティ担当者だけの、仕事に、するのではなく、全社的な、プロジェクトとして、位置づけ、全ての、従業員が、自分の仕事の中で、貢献できる、機会を、創出する(クライメート・ワーク)。
- 徹底した「透明性」:進捗状況や、直面している課題について、成功も、失敗も、含めて、誠実に、従業員と、共有し、対話すること。
まとめ:パーパスこそが、最高の「エンゲージメント・ツール」
「静かな退職」は、企業にとって、深刻な、経営課題です。
そして、その、根本的な、解決策は、監視の、強化や、短期的な、インセンティブでは、ありません。
従業員一人ひとりが、「この会社で、働くことには、社会的な『意味』がある」「自分の仕事は、より良い、未来の、創造に、繋がっている」と、心から、感じられること。
その、共有された「パーパス(存在意義)」こそが、人々の、内発的な、モチベーションを、引き出し、エンゲージメントを、高める、最も、パワフルな、原動力なのです。
そして、気候変動という、人類共通の、課題に、真摯に、取り組むこと。
それは、企業が、従業員に対して、提示できる、最も、説得力のある、パーパスの、一つと、言えるでしょう。
従業員の「魂」を、再び、呼び覚ましたいなら、まず、企業が、自らの「魂」を、示すべきなのです。